ハウスメーカーの場合、施工費や材料費はシステム化されており、比較的安価であると言えます。(沖縄県や離島では材料は工場直送となり、運賃などが上乗せされます)したがって、直接工事費(工事原価)は比較的安価でしょう。
しかし、ハウスメーカーは一般管理費に多くの費用が必要となります。コマーシャルや新聞折込チラシ、パンフレットなどの宣伝広告費、そして、住宅展示場の建設、開設、運営費のほか、営業マンの数も半端ではありません。と同時に、本社の運営費(役員報酬など)も必要となってきます。これらの費用は、直接工事費(工事原価)に対して40〜50%の比率とも言われております。
したがって、いくら直接工事費(工事原価)が安価であっても、一般管理費を考えると決して安いものではありません。
建売住宅の場合も、ある程度使用材料や施工業者(施工費)がシステム化されていますので、比較的安価であると言えます。
しかし、ハウスメーカーと同様に、宣伝広告費やモデルハウスの建設、開設、運営費がかかります。また、営業マンのほとんどは委託不動産会社の営業が多く、販売手数料などの費用が発生する場合があります。これらの一般管理費は、直接工事費(工事原価)に対する30〜40%の比率と言われております。
したがって、ハウスメーカーと同様に、いくら直接工事費(工事原価)が安価であっても、一般管理費を考えると決して安いものではありません。
「設計料はいりません」「設計料をサービスしますよ!」など、よく耳にするセールストークですね。しかし、それらをサービスして施工業者は赤字にならないとしても、原価で建築してくれるのでしょうか?そんなことはありません。見積書には表れなくても、一般管理費の中に含まれているのです。ただし、その設計は詳細設計ではなく基本設計のみがほとんどであり、一般的に、確認申請図面程度と言います。そして、工事は施工者任せ(設計事務所で行う施工監理は、一般的にありません)となっているところが多いようです。
設計施工一括発注の場合、通常の建築工事(設計事務所によって設計完了後、施工業者を選定し、設計事務所による施工監理をつけて施工を行う建築工事)と、費用的には大差はないものと考えられます。しかし、そこには大きな落とし穴が待っています。設計はコスト重視の設計となり、詳細は設計されていません。また、施工監理もいないために施工者の自由度が増し、どうしても利益中心になってしまいます。
このようなことから、使用材料は自由になりますので、安価(施工者の都合により変化できる)であると言えるでしょう。施工費については通常の単価であり、直接工事費(工事原価)に対する一般管理費の比率は、一般的に25%から30%程度となります。
上記比率は実行予算構成(実際に施工業者が施工を行う時の予算構成)であり、建て主様の目には入りません。見積書を提示していただいても、この比率が変わっています。一般管理費は形として残りませんし、ほとんどの建て主様はそれを施工者の利益と考えています。「高い」という印象を払拭するため、ハウスメーカー、建売住宅メーカー、設計施工一括施工業者も、一般管理費は10%から15%に下げてきます。しかし、その分を材料費や施工費に上乗せするのが一般的です。建築工事費は、このような「からくり」があって成り立っているのです。